糖尿病を含む生活習慣病の発症や増悪には、食事や運動など個人の生活習慣が密接に関連しており、その治療においては、医師による「指導」よりもむしろ、患者自身の自由意志で選択した行動変容の方が維持されやすく有効であることが知られている。「当事者」である患者の視点やナラティヴ(語り)を取り入れ、医師も患者も支援できる、当事者の経験を生かした医師・患者教育のプログラムを具体的に提案することは新しい試みである。 そこで、研究計画「ナラティヴ・アプローチを用いた糖尿病セルフマネジメントの支援」を立案し、臨床研究審査を経て、インタビュー調査を遂行した。ヴィジュアル的に示される糖尿病関連検査や生活習慣調査の結果(いずれも日常診療の範囲内で行われている検査)を媒介として、インタビューガイドに従った約30分のインタビュー調査を行い、ICレコーダーに記録して質的データ(言語記録)を作成し、それを解析した。 個人の質的データ(言語記録)を解析することによって、その患者個人に適した、いわゆるテーラーメードの患者支援に役立てることができた。さらに、個々の質的データからより一般的に適用可能なモデルを抽出し、理論的・方法論的検討を加えて、より質の高い心理医療支援のコミュニケーション・モデルを提案することを目指すことを考えている。
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