対象患者におけるHbA1cの時系列変動を予測するために、状態空間モデルによる予測モデルを構築し、粒子型フィルタによる実装を行った。高知大学医学部附属病院において蓄積されているデータに対し構築モデルを適用し、十分な予測精度があることを確認し、有効性を確認した。状態空間モデルにおける内部モデルとして糖代謝異常及び脂質代謝異常を定義し、対応する観測モデルとしてHbA1c及びHDL値を定義した。脂質代謝異常によって糖代謝異常が進むモデルとして定義し、各モデルパラメータは蓄積されている患者データによって定義を行った。116名の患者データに対し適用し、観測HbA1c値と予測HbA1c値における二乗平均平方根誤差が0.25となり、診療上十分な予測精度であることを確認した。構築モデルの対象患者は外来患者であり、定期的な検査が行われず、また欠損値となる入力データ群も存在すが、粒子型フィルタによる実装を行うことで、欠損値であっても予測処理が継続できる。また、予測分布としてデータを保持しているため、急激な検査値変動であっても対応することが可能である。本年度では糖尿病患者における時系列変動の予測モデルを構築したが、他の疾患に関しても外来患者のスクリーニングで行われる検査項目であっても、診療上十分な精度の予測モデルを構築することが可能となる。これらの結果から、診療で計測される欠損値の多い時系列データであっても、状態空間モデルを適切に記述し適用することで、診療上妥当な予測が行えることが確認できた。
|