研究概要 |
我が国のリハビリテーション医療現場では,ADL治療に関する明確なガイドラインはなく,その治療を理学・作業療法士の経験則で行っていることがほとんどである.そこで今回はリハビリテーション医療の治療対象として中心的領域である回復期脳卒中患者のADLの治療効果と治療効率を高めるために,回復期脳卒中患者に対するADL訓練用クリニカルパスの作成とその効果検証を行う研究を計画した. クリニカルパスによる脳卒中片麻痺患者のリハビリ治療の標準化を目的にした場合に問題となるのは,一般的にクリニカルパスの多くは,患者が自立し,在宅復帰していくことを前提にそのプロセスが表記される形で作成されているが,脳卒中患者ではそもそも「自立するか否か,在宅復帰できるか否か」が多くの場合,不明である点である.また,脳卒中片麻痺患者の主要治療課題であるADLは,複数の細項目で構成されているため,各々の項目についてのクリニカルパスを提示する必要もある.加えて,脳卒中は,障害の多様性から,その予後も多様であり,一定の層別化の上で予後を考えることが必要である. 本研究は,実用的なクリニカルパス作成を目指し,対象群の層別化を行っても各層に十分な症例数が担保されている必要がある.そのために,層別化しても各層に十分な症例数があるように,1000例程度の症例数の確保を目指している.平成22年度は700例程度の症例数を集めることができたが,平成23年度はさらに700例程度を追加することができ,十分な症例数を確保することができた.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は得られた情報からADL訓練用のクリニカルパス作成を試みる.具体的には,まず回復期リハビリテーション病棟で加療中に生じたFIM18項目の推移について解析を行う.入・退院時の点数を比較することで,各項目ごとに到達度を算出する(到達難易度の算出).また,隔週のデータを分析することで,その到達度に達する時間(期間)を算出する(到達期間の算出).この得られた標準的な期間を,分位点(パーセンタイル)を用いて時系列を踏まえて図示すると,項目ごとに標準的な改善推移を示すことが可能と思われる.このような図示は,分位点(中央値,25%値,75%値)を用いることで,一定の範囲で提示可能であり,この範囲の提示が多様性を示す脳卒中患者で,クリニカルパスの利便性を高める.
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