我々は実際の臨床でADL訓練などに使用可能な脳卒中片麻痺患者のADL自立度を指標としたクリニカルパスの要素として,1)FIMデータの十分な再現性が担保されていること,2)入院時と退院時といった2時点だけでなく,入院時から一定の間隔で経過を追うことができること,3)FIM運動項目合計点ではなく,FIM運動細項目を追うことができること,4)障害の多様性に対応するために一定の層別化が行われていること,といった4つの視点で作成を試みた. その結果,FIMは十分に高い再現性があり,統計的に6つのクラスターに分類し,各クラスターごとに,FIM運動細項目の点数の推移を入院時から2週間間隔の時間経過で明示することが可能であった.つまり,入院した患者がどのクラスターに属するかを知れば,FIM運動細項目が平均的にどのような経過を辿るかを知ることができる.また,クラスターごとの患者数の経時的な推移をみれば,どれくらいの患者がどの時期に退院していくかの目安にもなる. ADLに関するこのような指標は,我が国において存在せず,また,国際的に見ても,在院日数が短い欧米諸国ではこのような長期間の経時的なデータは見あたらず,非常な有益な情報になるといえよう. 以上,本研究では脳卒中片麻痺患者におけるADL自立度を指標としたクリニカルパスの作成を試み,その有用性を検証した.一方で,本研究が単一施設での結果であるため,今後の複数施設での追試が待たれる点は今後の課題である.また,今後は,本研で提案したADL自立度を指標としたクリニカルパスを実際に使用した場合の臨床的有用性の検証を行っていく予定である.
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