根拠に基づいたわが国の自殺予防対策ガイドラインを策定のための検討を行うことが研究の目的である。自殺はわが国における重要な健康問題であり、平成18年の自殺対策基本法の施行以来、国を挙げて自殺対策を総合的に推進している。しかし、依然として年間3万人以上の方が自殺で亡くなっている。自殺は複合的かつ社会的要因も影響する問題である。欧米では臨床試験・疫学研究の集積結果であるデータベースを系統的レビューの手法を用いて検索し、根拠に基づいた自殺予防対策ガイドラインがまとめられている。ここでは具体的にどのような対策を行うべきかが推奨されている。そこで本研究では、年齢(青少年、高齢者)社会環境(地域、職場、学校)、疾患(うつ病およびその他精神疾患、身体疾患)等で系統的レビューを行い、より有益な介入方法を特定した。系統的レビューは、医療、心理、社会科学系など関連する全ての分野のデータベースを網羅して行った。介入方法は、医療的介入だけでなく、心理社会、福祉、社会経済的要因なども含んで行った。自殺予防に関するエビデンスは多くなく、エビデンスの質にも限界があるものが多かった。可能なものについてはメタアナリシスを行い、介入のインパクトの計算を行った。メタアナリシスにおける新しい方法論であるマルチプルトリートメントメタアナリシスについて検討を行い、不完全な情報から最善のエビデンスを得る方法の可能性と限界についての検討を行った。2015年までの自殺率、自殺関連疾患負担(Burden of disease)の推計に必要となる、社会人口データの選定及びそのデータ収集を行った。さらに、推計のモデル化ための方法論の検討を行い、特にベイズ統計学の方法についての応用可能性の検討を行った。
|