わが国では年間3万人に近い人々が自殺で命を失っており、自殺関連行動も含め、その予防対策を効果的に推進していくことは喫緊の健康政策上の課題である。そこで、本研究では、根拠に基づいたわが国の自殺予防対策ガイドラインの策定のための検討を行った。自殺は複合的かつ社会的要因が影響する問題である。そこで、年齢、社会環境、疾患ごとに系統的レビューによるエビデンス(過去の研究成果の統合)の検討を行い、それらエビデンスの我が国での実施可能性を検討した。系統的レビューは、医療、心理、社会科学系など関連する全ての分野の文献データベースについて網羅的に検討を行った。介入は医療的介入だけではなく、心理社会、福祉、社会経済的な介入法も含め検討した。さらに、系統的レビューにより、震災による自殺への影響の検討を行った。その結果、今後の自殺増加の可能性および特にリスクの高い集団が示された。また、系統的レビューにより、プライマリケアや地域において、うつ病スクリーニングにより自殺念慮をもつ人々がどの程度把握可能であるかについて検討した。うつ病スクリーニングでも自殺念慮の同定に対して、十分な性能があることが示され、その有用性が示された。系統的レビュー、費用効果分析等の結果から、自殺関連疾患負担の推定モデルを作成し、その検討を行った。以上から、わが国において根拠に基づいた自殺予防対策ガイドラインを策定するために必要なエビデンスを整備することが可能であることが示された。
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