骨髄間葉系幹細胞(MSC)の静脈内投与は、脳梗塞後の神経機能障害を改善する。本研究では、循環血から脳傷害部位へのMSCのより効率的な送達を実現することを目的としている。そこで、まず、MSCの血液脳関門(BBB)通過機構の解析に用いるインビトロ評価系を、申請者のこれまでの研究成果を基盤に、脳微小血管内皮細胞(BMEC)からなるインビトロBBBモデルとMSCを組み合わせることで構築した。BMECは全ての細胞が緑色蛍光を発するSD-Tg(CAG-EGFP)ラットから採取して培養したものを、MSCはラット骨髄から採取して培養し、蛍光試薬PKH26で標識したものをそれぞれ用いた。細胞培養インサート(メンブレンのポアサイズは8.0μm)にBMECを播種し、インサートのlowerチャンバーに10%牛胎仔血清を加えた条件下、upperチャンバーにMSC(1.5×10^4cells/cm^2)を加え、24時間後に固定して観察した。BMECの形態や単層構造に顕著な変化は認められない一方で、BMEC層を通過し、BMEC下にてメンブレン上に接着したMSCが多数観察された。また、ポアを通過してメンブレンの裏側に接着したMSCも認められた。MSCがどのようにBMEC層を通過するのかを明らかにするために、タイムラプスイメージングにより両細胞の動態を観察した。その結果、MSCが傍細胞経路を介してBMEC層を通過する様子が観察された。また、MSCがBMEC層を通過する際には、一時的にBMEC間隙が拡がり、通過後、その間隙は閉じて元の状態に戻る様子も観察された。以上より、本研究においてMSCのBMEC層通過を評価・観察できるインビトロ実験系の構築に成功し、この実験系を用いて、MSCが傍細胞経路でBMEC層を通過することを明らかにした。
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