本研究では、がん化学療法における医薬品使用の安全性を確立することを目的として、抗がん薬と漢方薬の併用実態を調査し、漢方薬が抗がん薬の安全性に及ぼす影響を評価した。本年度は、浜松医科大学医学部附属病院の全入院患者を対象に、フルオロウラシル(5-FU)、カルボプラチン(CBDCA)、シスプラチン(CDDP)、ネダプラチン(CDGP)、トポテシン(CPT-11)、ドセタキセル(DOC)、オキサリプラチン(L-OHP)、パクリタキセル(PTX)およびビンクリスチン(VCR)と、これらの抗がん薬と併用された漢方薬の使用量について、浜松医科大学医学部附属病院臨床データ検索システムを用いて調査した。調査対象期間は、2007年1月1日から2010年12月31日とした。その結果、5-FU、CBDCA、CDDP、CDGP、CPT-11、DOC、L-OHP、PTXおよびVCRを使用した患者のうち、それぞれ37(14.4%)、63(21.6%)、59(13.1%)、6(10.3%)、52(54.2%)、27(12.7%)、16(30.8%)、48(25.1%)および33(12.9%)名において漢方薬が併用された。これらの抗がん薬と併用された漢方薬は26製剤であり、その使用量の約8割を大建中湯(22.4%)、半夏瀉心湯(16.9%)、牛車腎気丸(13.9%)、十全大補湯(13.1%)および芍薬甘草湯(13.1%)が占めた。併用された組み合わせは、CPT-11と半夏瀉心湯(34名)、CBDCAと大建中湯(20名)、PTXと牛車腎気丸(18名)の順に多かった。さらに、漢方薬併用時の有害事象の発現の有無を調査した結果、PTXまたはCPT-11を使用した患者においてCommon Terminology Criteria for Adverse Events v4.0のgrade3以上の血小板減少の発現と大建中湯または半夏瀉心湯の併用にそれぞれ有意な関連性が認められた他、一部の漢方薬の併用が骨髄抑制、電解質代謝異常、肝機能検査値異常等の発現に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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