研究課題
ABC(ATP-Binding Cassette)蛋白質は、さまざまな薬剤の小腸からの吸収性や体内動態と直接結びついているだけでなく、糖尿病、動脈硬化、老人性の失明、アルツハイマー病といった疾患と関連している。ABC蛋白質の立体構造を原子レベルで明らかにすることができれば、創薬のための重要な情報が得られると期待される。これまでに、大腸菌のオーソログであるMsbAのC末端のαヘリックスを削ることにより、ヌクレオチドが結合した外向きの構造を決定することに成功した(Terakado et al. 2010)。しかし、ヒトABC輸送体に関しては、リンカー領域の遺伝子工学的改変、および、モノクローナル抗体のFabを結合させるなどにより、高品位の結晶の獲得することを試みてきたが、これまでのところ成功には至っていない。一方で、真核生物由来のハーフサイズの多剤排出ポンプの酵母を用いた大量発現系の確立に成功し、数10ミリグラムの精製標品を安定供給することが可能となった。そして、得られた精製標品を用いて17,000以上の結晶化条件をスクリーニングすることによって良好な結晶を得ることに成功した。大型放射光施設SPring-8のシンクロトロン放射光を用いてX線回折実験を実施し、真核生物ABC蛋白質としては、これまでに報告されて中で世界最高の解像度を得ることに成功している、現在、動作メカニズムの構造基盤解明に向けて、さらに詳細な解析を進めているところである。
すべて 2010
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Acta Crystallographica Section D-Biological Crystallography
巻: D66 ページ: 319-323