本研究は、注射剤として汎用される癌骨転移治療の第一選択薬であるゾレドロネートの次世代型経皮吸収製剤を開発し、ゾレドロネートによる癌治療の改善と癌患者のコンプライアンス・QOLの向上を目指すものである。 平成22年度では、ゾレドロネートの新規定量法をLC-MSを用いて確立するとともに、ゾレドロネートを高濃度に封入した新規親水性パッチ製剤の創製に成功した。フランツ型の拡散セルを用いたラット皮膚透過試験の結果、貼付24時間で投与量の約30~40%のゾレドロネートが皮膚を透過することが明らかとなった。また、ゾレドロネートの皮膚透過量とパッチ製剤のゾレドロネート含量に線形性が認められたこと、本パッチ製剤に使用した親水性粘着剤は水溶性薬物に対する拡散性が優れていることなどから、本パッチ製剤によるゾレドロネートの皮膚透過機構には、粘着剤中に溶解した高濃度のゾレドロネート層が皮膚表面上に存在することにより形成される濃度勾配が寄与しているものと考えられた。ゾレドロネートパッチ製剤をラット腹部皮膚に貼付し皮膚刺激性を評価したところ、パッチ製剤剥離後3日目において、ゾレドロネートによる遅延性の軽度の皮膚紅班が観察されたが、抗酸化剤ブチルヒドロキシトルエンをパッチ製剤に添加することにより皮膚紅班は完全に抑制された。以上、ゾレドロネートを効率よく皮膚から吸収させる新規親水性パッチ製剤の創製及びその安全性を高めることに成功した。
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