本研究は、注射剤として汎用される骨転移治療薬ゾレドロネート(ビスホスホネートの一種)の次世代型経皮吸収製剤を開発し、ゾレドロネートによる癌治療の改善と癌患者のコンプライアンス・QOLの向上を目指すものである。 平成22年度では、ゾレドロネートを高濃度に封入した新規親水性パッチ製剤の創製に成功し、ラット皮膚貼付後にゾレドロネートの良好な皮膚透過性が得られることを明らかにした。 平成23年度では、骨転移に対するゾレドロネートパッチ製剤の治療効果を検討した。すなわち、骨転移モデルマウスに対してゾレドロネートパッチ製剤を貼付したところ、下肢骨中癌細胞の増殖が顕著に抑制された。ゾレドロネートパッチを繰り返し貼付することにより、転移抑制効果が増大することも明らかにした。ゾレドロネートをマウスに注射した場合に認められた副作用である腎障害は、ゾレドロネートパッチ製剤を貼付した場合には認められなかった。また、ゾレドロネートパッチ製剤をラット皮膚に貼付し皮膚刺激性を評価したところ、パッチ製剤剥離後ゾレドロネートによる遅延性の軽度の皮膚紅班が観察され、経表皮水分蒸散量の上昇も認められたが、抗酸化剤ブチルヒドロキシトルエン(BHT)をパッチ製剤に添加することにより皮膚紅班及び経表皮水分蒸散量の上昇を顕著に抑制可能であることを明らかにした。また、BHT添加はパッチ機能及び薬理効果に影響しなかった。 以上、ゾレドロネートを効率よく皮膚から吸収させる新規親水性パッチ製剤の創製及びその安全性を高めることに成功し、骨転移治療における有用性を明らかにした。さらに、最近、微細針を利用することでビスホスホネートの皮膚透過性と安全性を高めたパッチ製剤を新たに開発することにも成功し、骨転移治療への応用の可能性が示されている。
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