現在までに、アンジオテンシンII(AngII)によりアンジオテンシンIItype1A受容体を介してERKのリン酸化によりメガリンの発現が低下すること、アンジオテンシンIItype2受容体を介してPKBの活性化によりアルブミンの細胞内取り込みが促進することが報告され、二通りの制御によりメガリンの発現が調節されていると考えられる。ERKのリン酸化の結果、メガリンの発現量が減少することによりリガンドの取り込みも抑制されるか明らかではない。本年度は、AngII添加によりPI3K-Akt/PKBを介してメガリンの発現が増加するかをブタ腎尿細管細胞株LLC-PK1細胞を用いて検討した。メガリン発現に対する影響を検討するために、24時間血清を除いた状態で培養したLLC-PK1細胞に、AngIIを終濃度10^<-6>~10^<-9>M添加し、0、3、6、24時間後、細胞を回収した。回収した細胞より、total RNAを抽出し、RT-PCRを行いcDNAを合成する。合成したcDNAを鋳型とし、特異的なメガリン遺伝子のプライマーを用いてreal time-PCRを行い、メガリン遺伝子の発現量を検討した。また、LLC-PK1にロサルタンカリウム(AT_<1A>Rアンタゴニスト)を10^<-7>~10^<-9>M、添加して同様の検討を行った。今回の検討では、AngIIの添加により、明らかなメガリンの発現増減は認められなかった。また、ロサルタンカリウム単独、あるいはAngIIと共存化共に、メガリンの発現の増加は認められなかった。今回用いたLLC-PK1細胞では、有意にAngIIが作用しているように思われず、今後ヒトAngIItype1A受容体、AngIItype2受容体を恒常的に発現させた細胞株を作成し、同様の検討を行ってみる。
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