研究概要 |
メガリンは、糸球体でろ過されたタンパクなどを細胞内に取り込む受容体である。腎不全では、タンパク尿を呈することが多く、このタンパク尿の改善にメガリンの発現が関与しているかどうかを検討した。5/6腎臓摘出したラットを12週間飼育することにより、慢性腎不全モデル動物を作製した。5/6腎摘出1週前、5/6腎摘出直後(0週),2,4,8,12週目に血圧、採血、採尿を行い、得られた尿および血液より腎機能パラメーター(血中尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Ucr, Pcr, Ccr,)、尿中タンパク(UproV)を測定した。0週より12週まで、アンジオテンシン受容体阻害薬であるロサルタンを20mg/L(低用量群), もしくは200mg/L(高用量群)の濃度で飲水投与した。血圧は、5/6腎摘ラットでは、12週目まで正常ラットより上昇していたが、高用量群では上昇は認めなかった。しかし、低用量群では、5/6腎摘ラットと同程度の血圧上昇を認めた。しかしながら、BUN, Ccr, UproVにロサルタン処置群で有意な改善は認められなかった。これらラットの12週目の腎臓組織切片を作製して、抗メガリン抗体を用いた免疫染色を行ったところ、5/6腎摘ラットにおいて、メガリンの発現が低下していた。また、高用量群ではメガリンの発現量は有意ではないが増加していた。しかし、12週の腎組織のメガリン遺伝子発現を検討したところ、各群に差は認めなかった。以上のことより、5/6腎摘ラットにおけるタンパク尿は、メガリンの発現低下が関与していることが示唆された。しかし、ロサルタン投与により、腎臓におけるメガリンの増加は認めず、腎機能の改善も認めなかった。細胞を用いた実験では、ロサルタンによりメガリン遺伝子の発現増加が示されている。このことより、ロサルタンの投与量の再設定が必要であると考えられる。
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