米国男性において、前立腺癌は最も発現頻度の高い癌であり、近年日本においても増加傾向にある。前立腺癌に対する治療は、GnRHアナログにより男性ホルモンの働きを阻害する"ホルモン療法"が第一選択となっている。治療開始後一定期間が経過すると癌はホルモン治療抵抗性となって再び増大するが、ホルモン治療抵抗性を示すまでの期間が2~10年と、患者により大きく異なることが知られており、前立腺癌治療の最適化を行う上で重要な問題点となっている。本研究は、患者の遺伝子情報からホルモン治療の有効期間の個人差を予測し、ホルモン療法、手術療法、放射線療法などを組み合わせた各患者に最適な治療法が提案可能になるという、臨床的意義を有する。 本研究期間では、現在ホルモン治療を受けている、もしくは過去にホルモン治療を受けていた前立腺癌患者214例を登録し、ゲノムDNAを取得した。初回ホルモン療法の奏功期間は登録被験者全例において調査した。また、アンチアンドロゲン除去症候群の有無については、71例分の情報が収集可能であった。また、前立腺癌の発症に関する遺伝子、アンドロゲンシグナルに関わる遺伝子など、ホルモン治療抵抗性に関わる可能性のある遺伝子を文献検索により選出し、その遺伝子上に存在する遺伝子多型をデータベースで調査した。最終的に、21遺伝子48遺伝子多型を選出し、214例において判定を行った。来年度は、判定した遺伝子多型が初回ホルモン療法の奏功期間の個人差に関連するか、アンチアンドロゲン除去症候群の発現の個人差に関連するかを解析する予定である。
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