抗菌ペプチドは自然免疫を担い、病原性微生物などに感染する危険から生体を防御するのに役立っている。我々は、カンナビノイド受容体のリガンドとして同定された2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)が、ヒト大腸癌由来Caco-2細胞において、2-AGが抗菌ペプチドLL-37の発現を誘導することを見出した。昨年度は、2-AGによる抗菌ペプチドの誘導作用はヒト肺癌由来A549細胞においてもみられることが確認され、腸管と同様に病原性微生物に曝されている肺上皮でも起こることが示唆された。また、この2-AGによる抗菌ペプチド誘導作用の一部は、P38MAPK阻害剤SB20358を用いた実験から、p38MAPK経路を介した情報伝達が関わっていることが示唆された。本年度は、in vitroで確認された腸管における2-AGによる抗菌ペプチド誘導作用が、in vivoで再現されることを検討した。実験には、大腸菌DH5α株にGFPを遺伝子導入したものを作出し、病原微生物マーカーとして用いた。BALB/cマウスに2-AGを投与した後、病原微生物マーカーを経口投与し、2-AGがGFP発現大腸菌の生存に与える影響を測定した。その結果、2-AGを投与することで、GFP発現大腸菌投与1時間後のGFP発現大腸菌数を減少させた。よって、2-AGは、in vivoにおいて、病原微生物マーカーを減少させることが確認された。以上のことから、2-AGは病原性微生物などの感染から生体を防御することが示唆された。2-AGは、生体の抗菌ペプチドの発現を増加させ、自然免疫を賦活させることで、予防的な感染防御に利用される。
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