研究課題/領域番号 |
22790520
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 貴子 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (10375173)
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キーワード | 癌 / 幹細胞 / 個別化 |
研究概要 |
乳癌の進展、再発、転移などの腫瘍の動態は癌幹細胞の性質に依存すると考えられる。本研究では癌幹細胞のサブタイプを明らかにし、病態と比較検討することで、予後予測や転移予測、または治療効果判定に役立つマーカーを探索することを目的とする。癌幹細胞は低接着培養下でスフェロイドを形成する。平成23年度は平成22年度に確立した培養条件にて、乳癌組織検体からスフェロイドを培養し、スフェロイド形成能、癌幹細胞マーカー染色、癌幹細胞性遺伝子発現と病態との関連について解析した。乳癌幹細胞マーカーと考えられているCD44+/CD24-に高い薬剤排出能を示すHoechst-を加えたCD44+/CD24-/Hoechst-細胞含有率がスフェロイド形成数と正相関を示し、癌幹細胞性を示すマーカーとして有用だと考えられた。CD44+/CD24-/Hoechst-細胞含有率は癌幹細胞性が高いと考えられているBasa1タイプで高い傾向を示した。さらに染色性はで異なり不均質を示すことが明らかとなった。また癌幹細胞関連遺伝子発現パターンは培養期間によらず一定であり個々の癌幹細胞の性質を反映していると考えられた。ERE活性においてはLumina1タイプではスフェロイドにおいても活性が維持されていたが、一部スフェロイドでは活性が失われていた。CD44+/CD24-/Hoechst-細胞含有率が癌幹細胞性を示す有用なマーカーとなりうる事を見いだしたが、さらに癌幹細胞関連遺伝子発現、ERE活性を組み合わせにより、癌幹細胞性はさらに細分化できる可能性が示唆された。今後これらのマーカーを用いて異なる性質をもつスフェロイドを抽出し、細分化可能とするマーカー探索に結び付けたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年間を通して、数十例の乳癌組織検体からのスフェロイド培養を実施した。またスフェロイド形成能、癌幹細胞性遺伝子発現、ERE活性解析についてもintrinsic subtype別に行い、病態の関連について検討した。スフェロイド形成能と正相関を示すマーカーを見いだし、さらに癌幹細胞性遺伝子、ERE活性を組みあわせることで、癌幹細胞性をさらに細分化できる可能性を見いだすことができたことから、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
癌幹細胞性をさらに細分化できる可能性が示唆されたことにより、細分化に有用な新規マーカーの探索を行う。マーカー探索にはスフェロイドから抽出した蛋白を用いて探索する予定であったが、十分な蛋白量が得られない症例も多く、またスフェロイドの長期培養による増殖も望めないため、マイクロアレイによるマーカー探索に変更する。
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