1.前年度までに低分化胃癌細胞株4種類からタンパク質を抽出し、これらに対して16症例ずつの胃癌血清をアプライし、自己抗体スクリーニングのウェスタンブロットを行った。反応するバンドを切り出してタンパク質を質量分析計で同定した。 2.質量分析計を用いて同定に成功したタンパク質は約30種類あり、これらに対する自己抗体が新規の低分化胃癌マーカー候補として考えられた。これらのうち(1)転写因子、細胞骨格系タンパク質、シグナル伝達系タンパク質等、発癌や癌の浸潤・転移に関係していると推定されるタンパク質であること、(2)複数の低分化胃癌細胞株にまたがって同定されているタンパク質であること、(3)低分化胃癌でも3種類の組織型のうち2種類以上の患者で反応しているタンパク質であること、(4)リコンビナントの合成タンパク質がコマーシャルに得られるタンパク質であること、を優先条件として絞込みを行った。絞込みの作業によって8種類のタンパク質を選んだ。 3.選んだ8種類のタンパク質を電気泳動し、最初のスクリーニングに用いた胃癌16症例の血清と反応させ、バリデーションを行った。その結果、8種類のうち3種類のタンパク質でバリデーションに成功した。 4.バリデーションに成功した3種類のタンパク質を抗原としたウェスタンブロットを再度行った。この際に用いた患者血清は最初のスクリーニングに用いた血清とは別セットの32例、および性別・年齢をマッチさせた健常コントロール32例であった。その結果、3種類のタンパク質のうち2種類に対する自己抗体が新規の低分化胃癌マーカー候補として確認されるに至った。 5.これら64人分の血清で感度・特異度のROC分析を行ったところ、既存の腺癌マーカーである、CEAとCA19-9を上回るAUC (area under curve)が得られた。
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