本研究の目的は、白血病細胞の抗白血病薬感受性を調べるための培養検査法において、骨髄微小環境により近い条件で白血病細胞の培養を行い、生体内での現象をより正しく反映する検査法の開発を目指すことである。 白血病幹細胞に限らず癌幹細胞は低酸素環境に存在すると報告されている。そこで、低酸素培養装置を用いて白血病細胞の培養を行い、WST-1アッセイ法により細胞増殖作用を、メチルセルロース培地におけるコロニーアッセイ法により自己複製能効果を、従来型培養装置を用いた方法とで比較検討した。その結果、低酸素刺激は白血病細胞に対して、短期的な増殖促進効果をもたらす一方で、自己複製能を低下させることがわかった。更に骨髄環境を模するため、遺伝子組み換え型Notchリガンド蛋白をコーティングした培養プレートを用いて低酸素培養装置にて培養を行ったが、従来型培養装置で見られる効果との有意な差異は認められなかった。現在は、これらの方法で培養した細胞を回収して、このような作用をもたらした遺伝子や蛋白の発現の変化を調べ、培養法により効果に違いを生じさせた分子機序に関しての検討を行っている。今後は、更に抗白血病薬存在下での培養を行うと共に、より生体環境に近い培養法の有用性を検討する予定である。この有用性が確立されれば、白血病患者の治療において薬剤感受性の予測や予後の推定が可能となり、臨床検査として大いに有用であると考えられる。
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