研究概要 |
本研究においては, 生体肝移植における移植肝機能不良, 特に過小グラフトに起因する過小Graft症候群の病態メカニズムを解析し, 臨床応用可能な機能予後予測システムの確立を目指した。 平成24年末までに累計250症例の生体肝移植を施行し, これまでに構築された臨床データベースより解析を行った。多変量解析での短期予後不良因子はRecipient重症度, 過小Graft, Recipient/Donor高年齢であった. しかし現実には各因子の連続変数については症例間でCut-Offの乖離があり, そのことが治療法個別化への課題であった. Decision-tree analysisを踏まえたリスクモデルで, Recipient重症度に応じた適性Donor年齢, Graft容積のCut-off算出, ならびにPortal modulation適応の選別が可能となった. 適正なPortal modulation介入によりGW/RBWの下限は0.65%まで見込めた。急性期腎機能障害の指標としてRIFLE分類を適応し, 移植後R class: 23.5%, I class: 21%, F class: 16%の腎機能障害を認めた. R classまでの腎機能障害は移植予後に影響を与えなかった. I/F classは短期予後不良のみならず, 晩期に移植耐術例の22%が慢性腎障害(K/DIGO Stage3/4)へ進展し, 治療認容性低下から有意に予後不良であった. I/F classへの進展Riskは, MELD≧20, GW/RBW<0.7%, 出血量≧55ml/kg, 術前糖尿病であり, 作成されたリスクモデルでRIFLE進展は層別化された. 本研究での解析結果、予備実験については別途述べる論文掲載済み、さらに確立された生体肝移植機能予後システムについて論文掲載予定である。
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