ヒト血中リポタンパク質(CM、VLDL、LDL、HDL)に含まれるTGの簡易分画定量法を検討するために、研究計画書に沿って実験を行った。 (1)精製リポタンパク質を用いた検討 総TG測定で一般的に用いられている測定系(リポプロテインリパーゼを用いる系)に界面活性剤などの化学物質を共存させ、段階的超遠心法で分離精製した各リポタンパク質[VLDL+CM(d<1.006)、IDL(d:1.006-1.019)、LDL(d:1.019-1.063)、HDL(d:1.063-1.21)]に対する反応性を評価した。各種界面活性剤を一種類あるいは数種類組み合わせて検討したが、各リポタンパク質に対して特異的に反応する候補は見つからなかった。次に、リポプロテインリパーゼの代わりにコレステロールエステラーゼ(CE)を使用して同様に検討したところ、界面活性剤を加えなくてもPseudomonas由来(COE311、東洋紡)やMicroorganism由来(COE313、東洋紡)のCEは各リポタンパク質に対する反応性に違いが現れ、特にHDLとLDLに対する反応が著しく低下した(反応率3~50%)。現在、界面活性剤をこの反応系に共存させることで、より高い選択性を持たせるよう検討を継続して行っている。 (2)HPLCを用いた検討 上記(1)で調べた試薬をゲル濾過カラムからの溶出液に直接オンライン注入し、その溶出パターンから試薬の反応性を確認した。その結果、用いる酵素の種類によって明らかに反応性が異なることがHPLCパターンからも確認できた。 以上のことから、CEはリポプロテインリパーゼ活性も有しており、リポタンパク質に対するその反応特性は酵素の由来に関係していることが示唆された。現在検討している測定系では、反応タイムコースがエンドに到達せず、吸光度が上昇し続けるため、これを抑える工夫が今後必要である。
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