研究課題
卵巣明細胞腺癌(CCA)の血液診断が可能なマーカーを探索するために、4種のCCA細胞株の培養上清に含まれるタンパク質を質量分析装置により解析した。各細胞株の培養上清から1200種類以上のタンパク質が検出・同定され、少なくとも3種類のCCA細胞株の培地中から検出されるタンパク質は976種類存在した。さらに非CCA細胞株群4種の培養上清も同様に解析し、上記のCCA細胞株から検出されたタンパク質群と比較した結果、CA125やCYFRA21-1、HE4、KLK6といった既知の卵巣癌マーカーが検出されたが、254種類のタンパク質がCCA細胞株群の培養上清から特徴的に検出されることが明らかになった。その中で、細胞外分泌型もしくは細胞質膜局在型として分類され、かつデータベース上の情報において種々の組織で広範囲な発現は見られないタンパク質30種類に焦点を当てた。これらのタンパク質がCCAにて本当に発現上昇しているのかどうか調べるために、様々な卵巣癌細胞株および患者組織検体を用いて、当該タンパク質群の遺伝子発現量をリアルタイムPCR法により解析したところ、10種類の分泌タンパク質がCCA細胞株および患者組織にて特徴的に発現上昇しており、新規な卵巣癌診断マーカーとなる可能性が示された。これらのタンパク質が本当にCCA患者の血液中で検出されるのかどうか調べるために、まずCCAとの関連性が知られていない34kDタンパク質の測定を市販ELISAキットにより行った。その結果、健常および良性腫瘍群(n=23)に比して明細胞腺がん群(n=13)では有意に高い値が示され、本疾患の診断マーカーとなりうる結果が得られた。その他のタンパク質についてもマーカーとしての有用性を評価するために、ELISA法やMRM法に基づいた測定系の構築を進めている。
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FEBS Journal
巻: 278 ページ: 1470-1483