研究課題/領域番号 |
22790532
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
祖父江 沙矢加 中部大学, 生命健康科学部, 助教 (50513347)
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キーワード | CD109 / トランスジェニックマウス / モノクローナル抗体 |
研究概要 |
本研究ではCD109を全身に強く発現させたトランスジェニックマウスを用いてCD109の分子機能を明らかにすることを第一の目的としている。昨年度は樹立した3系統のトランスジェニックマウスでは肺、心臓、腎臓、膵臓、筋組織にCAGプロモーターで強制発現させたCD109の異所性発現をみた。さらに3系統で血清中に多量のsoluble CD109分子が確認出来た。経時的観察より本トランスジェニックマウスは生後1年前後に腫瘍形成を認めることが明らかとなった。組織学的検索ではリンパ増殖性疾患、肝血管腫、腺癌などが観察された。トランスジェニックマウスの3匹に1匹にこのような腫瘍形成を認めたが、野生型マウスでは認めなかった。一方腫瘍細胞におけるCD109の発現レベルは低く血清中の遊離CD109分子を介したシグナル伝達機構の修飾に伴う腫瘍形成が示唆された。現在詳細に分子機構を解析している。同時にCD109発現量が異なる二つのメラノーマ細胞株を用いて、CD109のプロモーター解析を進めている。CD109発現量が高い細胞株では、ERK、Aktのリン酸化が増強しており、さらに腫瘍の血管新生を制御するのに不可欠とされているEgr1の発現も増強していた。転写に必要な最小領域内にはEgr1の転写因子結合モチーフがありEgr1がCD109の転写に深く関与していると推察された。腫瘍細胞においてはERK,Aktなどの活性化に伴いEgr1を介してCD109の発現が増強する一方で、過剰発現したCD109は腫瘍細胞のシグナル伝達機構を乱し発癌過程が加速されことが示唆された。本研究の第二の目的として実験計画に予定したCD109に対するモノクローナル抗体作成は未だ利用可能な抗体は得られていない。来年度はヒト発癌と遊離型CD109の関連を明らかに出来るようにモノクローナル抗体作成により力点をおき研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初CD109の強制発現だけでは腫瘍形成は見られないと考えており発癌モデル動物との交配を行い腫瘍形成における影響を検討する予定であったが、CD109の強制発現のみで腫瘍形成が確認できた。モノクローナル抗体作製は現在進行中であり、研究計画に沿っておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
CD109トランスジェニックマウスにおける腫瘍形成を、個体数を増やして検討する。また腫瘍形成におけるCD109の役割にEgr1が関与している可能性が示唆され、転写レベルでの詳細な解析を行う予定である。CD109のモノクローナル抗体については、引き続き作製を行いELASA系の確立を目標とする。
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