本研究の最終目的は、糖尿病におけるIL-18の役割の解明と新規糖尿病マーカーの発見である。そのため、平成22年度は糖尿病態下で産生されるAGEによるIL-18の発現変化および機能変化を解析した。その結果、マクロファージ系RAW細胞においてAGEがIL-18の発現を増加させることを見出した。また、IL-18はAGEにより多量体化し、活性が低下していた。これら2つの結果から、糖尿病においてAGEがマクロファージからのIL-18の産生を誘導すると考えられるが、同時に産生されたIL-18はAGEにより多量体化し、機能低下しているものと考えられる。以前の報告では、糖尿病でIL-18が増えることが報告されている一方、IL-18の欠乏が糖尿病を引き起こすという矛盾した知見がある。今回得た知見は、この矛盾した報告を解明する足掛かりになると考えられ、糖尿病におけるIL-18の機能解明に貢献すると考えられる。また、多量体化したIL-18の解析により、多量体IL-18が新規の糖尿病マーカーになる可能性も考えられる。今後は多量体化したIL-18を精製し、構造変化を詳しく解析する一方で、この多量体化したIL-18により脂肪細胞がどのようなサイトカインを発現させるのかを検討する。また、糖尿病患者でのIL-18の多量体化を実際に検討し、マーカーとしての可能性を検討したい。また、本課題を遂行している上で、糖尿病下での神経への影響を検討していたところ、AGEなどにより産生される活性酸素がサイトカインの発現を調節していることが明らかとなり、英文原著として報告した。
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