研究課題
本研究では糖尿病における新規のバイオマーカーの探索を目的として、インターロイキン18(IL-18)に着目して検討を行った。糖尿病では高濃度のグルコースによりタンパク質が非酵素的に糖化される糖化反応が生じている。この糖化反応の過程で生成される活性酸素が、IL-18のmRNAの発現を増加させることを見出し、糖尿病におけるIL-18の過剰蓄積に活性酸素が関与している可能性を示唆した。また、糖化反応生成物(AGEs)によるIL-18の多量体化以外にも、活性酸素などによりさらにIL-18自体のSH基などが酸化的に修飾されることを、IL-18の遺伝子変異体を用いた解析から明らかにした。ディファレンシャルディスプレイ法によりこの酸化修飾されたIL-18により脂肪細胞から発現される因子を解析したところ、アディポネクチン産生の著しい低下が認められた。また、培養細胞を用いてIL-18によるインターフェロンγ(IFN-γ)の発現を解析したところ、修飾されたIL-18ではIFN-γの発現誘導が低下していた。これらの結果から、糖尿病ではIL-18はその機能が著しく低下していることが示唆された。IL-18の発現誘導は炎症状態に関与する炎症性サイトカインであり、多くの炎症での治療において有用性が評価されているが、今回のこの成果により糖尿病状態の把握にも役立つことが考えられる。また、活性酸素によりIL-18が修飾されることから、この修飾されたIL-18が新規の糖尿病のマーカーになる可能性が考えられる。
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Neuroscience letters
巻: Vol.494, No.1 ページ: 29-33
DOI:10.1016/j.neulet.2011.02.047