研究課題
本研究の目的は癌標的分子であるHB-EGFの発現に関与する転写因子を同定し、その転写因子がHB-EGFと同様に癌の診断と治療において有用であることを明確にすることである。そこで、本年度はHB-EGFの転写に関わる遺伝子群をHB-EGFの発現を抑制させることと、逆に発現を亢進させることの2種類の方法で網羅的にスクリーニングした。まず、HB-EGFの発現を抑制させる実験系として、HB-EGF特異的抑制剤であるCRM197を用いた。HB-EGF高発現細胞株にshRNA発現ライブラリーを導入し、培養上清中にCRM197(10μg/ml)を添加し、72時間後に生存細胞からRNAを回収した(A)。また、HB-EGFの発現を亢進させる実験系としてHB-EGF低発現乳癌細胞にHER2やKras遺伝子導入し、HB-EGFの発現を亢進させた(B)。AとBのRNAを用いた発現アレイ解析により、HB-EGFの発現に関与する候補遺伝子としてHB-EGFの受容体であるEGFRの下流に位置する遺伝子(MAPK及びAkt)や乳癌において癌増殖に関連する遺伝子、癌の血管新生に関連する遺伝子が同定された。また、核内転写因子としてPPARγや他の転写因子(特許のため遺伝子名は伏せさせていただく)も同定された。最終的にHB-EGF高発現細胞株に対して、上記で抽出された転写因子の発現を抑制し、CRM197に対して抵抗性を示すことができた遺伝子をHB-EGFの発現に関与する転写因子として同定した。来年度はスクリーニングした遺伝子群を用いてミニアレイを作成後、HB-EGFが高発現しているヒトの乳癌組織を用いて解析し、HB-EGFの発現させる核内遺伝子をさらに絞り込み、それらの遺伝子がHB-EGFの発現及び癌増殖機構に関与するかを検討する。
すべて 2010
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