研究課題
本研究の目的は癌標的分子であるHB-EGFの発現に関与する遺伝子を同定し、その遺伝子がHB-EGFと同様に癌の診断と治療において有用であることを明確にすることである。そこで、本年度はH22年度にスクリーニングしたHB-EGFの発現に関与する115遺伝子のヒト乳癌組織での発現解析を行い、HB-EGFの発現に関わる遺伝子をさらに絞り込み、それらの遺伝子がHB-EGFの発現及び癌増殖機構に関与するかを検討した。HB-EGFの発現が高いヒト乳癌組織30例と低いヒト乳癌組織17例を用いて前述の115遺伝子の発現量を解析したところ、HB-EGFの発現量と相関する遺伝子として翻訳の際にHB-EGF mRNAのexon junctionに結合し、HB-EGFのタンパクへの翻訳を増進する遺伝子X(特許のため遺伝子名は伏せさせていただく)が同定された。HB-EGF高発現乳癌細胞株を用いてsiRNA法による遺伝子Xの発現量を抑制すると、HB-EGF mRNAの断片化を認め、細胞培養上清中に分泌されるHB-EGFタンパク量が抑制された。また、遺伝子Xの発現が恒常的に抑制された乳癌細胞を作製し、in vivoでの造腫瘍能抑制効果を検討したところ、コントロールの細胞と比較して遺伝子Xの発現が抑制された細胞では造腫瘍能は抑制された。さらに、ヒト乳癌組織における遺伝子Xの発現量は無病増悪期間と有意な相関を示した。以上より、本研究で同定された遺伝子XはHB-EGFの発現にタンパクへの翻訳を増進することで関与し、乳癌における新たな標的分子となることが示唆された。今後は遺伝子Xを特異的に抑制する低分子化合物を同定し、臨床応用への可能性を追求していく予定である。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)
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