研究概要 |
本研究では、既に構築した828例の肥満・メタボリック症候群(MetS)データベースを基に、脂肪酸分画・単球機能に着目した新規動脈硬化診断法の確立を目指して、下記研究を施行した。 (1)各脂肪酸摂取量と心血管病(CVD)リスクとの関連:栄養調査では血中アディポネクチンは魚摂取量と正相関を、肉摂取量は逆相関を認めた。最近、JELISによりエイコサペンタエン酸(EPA)のCVD発症抑制作用が報告され、そのサブ解析ではEPA/アラキドン酸(AA)比は心血管病発症抑制と関連すると報告された(Cir J, 2009)。今回、肥満・MetSにて、血中EPA/AA比が抗炎症性サイトカイン・IL-10や動脈硬化指標・PWVと負の相関を有する事を認めた(ATVB, submitted)。 (2)肥満・Metsの各脂肪酸血中濃度とCVDリスク及び末梢血単球機能との関連:肥満の末梢血単球では、M1マーカー(TNFα,IL-6)発現上昇やM2マーカー(IL-10,CD163)発現低下、糖尿病や脂質異常症では単球中IL-10の低下を認めた。PWVには年齢と低CD163が独立して関連し、単球M1/M2の質的変化の動脈硬化への関与が考えられた(Diabetes Care 33 : e7,2010)。EPA/AA比は単球中IL-10と有意な相関を認めた。 (3)EPA投与による各脂肪酸分画濃度と単球機能の改善効果とその分子機序:肥満症において、EPAの3ヶ月投与によりIL-10の上昇を認め、PWVの改善に関連していた。ヒト単球THP-1細胞において、EPA投与によるPPARγを介するIL-10の発現上昇を認めた(ATVB, submitted)。 (4)現在、肥満500例において、肥満・脂質関連候補遺伝子272遺伝子712SNPsの検討をについて遺伝子型タイピングを終了し、脂肪酸分画・単球機能・動脈硬化との関連を解析中である。
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