研究概要 |
本研究では、既に構築した1050例の肥満・糖尿病・メタボリック症候群(Mets)コホートのデータベースを基に、脂肪酸分画・単球機能に着目した新規動脈硬化診断法の確立を目指して、下記研究を施行した。 (1)各脂肪酸量と心血管病(CVD)リスクとの関連:最近、JEHSによりエイコサペンタエン酸(EPA)のCVD発症抑制作用が報告され、そのサブ解析ではEPA/アラキドン酸(AA)比は心血管病発症抑制と関連すると報告された(Cir J,2009)。今回、肥満症患者にて血中EPA/AA比が末梢血単球における炎症性サイトカインであるTNFαと有意な負の相関を、IL-6と負の相関傾向を認めた。また、抗炎症性サイトカインであるIL-10と正の相関傾向を認めた。さらに、IL-10が動脈硬化指標・PWVと有意な:負の相関を認めた(Diabetes Care,in revision)。 (2)EPA投与による各脂肪酸分画濃度と単球機能の改善効果とその分子機序:肥満症において、EPAの3ヶ月投与による血中EPA/AA比の上昇と末梢血単球IL-10の改善に有意な相関を認めた。さらにIL-10の改善は、PWVの改善に有意に関連していた。更に、ヒト単球及びヒト単球系細胞株・THP-1細胞において、EPA投与によるIL-10の発現上昇を認め、その効果は阻害剤やsiRNAの実験より、PPARγを介する可能性が示唆された(Diabetes Care,in revision)。 (3)現在、肥満500例において、肥満・脂質関連候補遺伝子272遺伝子712SNPsの遺伝子型タイピングが終了し、脂肪酸分画・単球機能・動脈硬化指標との関連を解析中である。 以上、肥満・糖尿病・MetSにおける脂肪酸分画と単球機能改善に着目した早期動脈硬化進展の検出や心血管病予防・治療戦略の可能性が示唆された。
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