研究課題
大腸癌は進行すると予後不良であるため、早期診断や再発モニタリングマーカーが必要である。タンパク質リン酸化シグナルの異常は癌と密接に関連するため、そのタンパク質リン酸化の異常は癌のバイオマーカーとなりうる。本研究の目的は大腸癌手術標本のリン酸化プロテオーム解析により大腸癌に特異的なリン酸化シグナル分子を同定し、大腸癌バイオマーカーへの応用を検討する事である。平成22年度に、大腸癌(悪性腫瘍)、大腸ポリープ(良性腫瘍)、非腫瘍組織の定量的リン酸化プロテオーム解析を行い、大腸癌に特異的なタンパク質リン酸化修飾を246種類見出した。本年度は、リン酸化バイオマーカー候補の検証に用いるSelected reaction monitoring(SRM)法の技術開発を進めた。安定同位体標識スタンダードペプチドを用いたSI-phospho-SRM法による検証方法を検討し、その有用性を乳癌リン酸化バイオマーカーの検証を例にして実証した。現在、大腸癌のリン酸化バイオマーカーの検証を進めている。本研究の最終目標は、リン酸化バイオマーカーの血中検出であるが、血液を用いたSI-phospho-SRM検証法の開発は今後の課題と考えている。また、本研究で得られた大腸癌のタンパク質リン酸化プロファイルを用いて、大腸癌のリン酸化シグナル伝達機構の解明も試みた。バイオインフォマティクスを駆使して、大腸癌で変動しているリン酸化シグナルパスウェイをいくつか見出した。さらに、リン酸化シグナルを制御することで大腸癌の増殖や運動能を制御する新規癌関連タンパク質を見出した。本研究から新規の大腸癌バイオマーカー候補および治療ターゲット候補を見出すことができた。
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http://www.nibio.go.jp/proteome/index.html