1.ホルムアルデヒド添加飼料からの抽出定量実験 マウス用粉末飼料に人工的にホルムアルデヒドを添加して作成した飼料(ホルムアルデヒドとして0.1~1.0mg/g相当)を用いて、従来法による単純抽出で得られた試料をAHMT法にてホルムアルデヒド濃度を測定した。測定値は、理論値に対して44.6~55.1%であり、実際の含有量を十分反映した値ではなかった。水溶液では95%以上検出されていることから材料による差が生じることが明らかとなった。さらに抽出条件(pHなど)を変えて抽出量の差を比較したが、今回の条件下では単純抽出との差は得られなかった。 2.ホルムアルデヒド添加飼料を経口投与したマウスの生体影響評価 B6C3F1雌性マウスを用いて、既報の食品中のホルムアルデヒド濃度を参考に100mg/kg/dayの曝露量になるように調整したホルムアルデヒド添加飼料を50日間与え、通常の飼料を与えたコントロール群と比較した。投与期間終了後、糞便中の大腸菌数を計測し、粘膜免疫の中心となるIgA抗体について、新鮮糞便、血液、およびパイエル板細胞培養上清中のIgA量をELISA法にて測定した。消化管粘膜免疫系の免疫応答の変容はパイエル板リンパ球のsubpopulationの解析で評価した。ホルムアルデヒド曝露群では糞便中の大腸菌が有意に減少した(p<0.05)。消化管のパイエル板リンパ球のsubpopulation解析では、CD4/CD8比が曝露群で有意に増加した(p<0.05)。消化管免疫の中心的な役割を担うIgAは、コントロール群に比較して曝露群の血清中で有意に低下(p<0.001)し、糞便中においても低下傾向(p<0.1)を示した。 今回の実験からホルムアルデヒド経口曝露による大腸菌の減少、および消化管の粘膜免疫系への影響が明らかとなった。我々が意図しない濃度のホルムアルデヒドを含有する食品が市場に出回る可能性があり、その食品の摂取を想定した動物実験において粘膜免疫系への影響が示唆されたことから、食品中のホルムアルデヒドに対する一層の安全性評価の必要性が示された。
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