研究概要 |
B6C3F1雌性マウスを用いて、前年度の食品中のホルムアルデヒド濃度を参考に100mg/kg/dayの曝露量になるように調整したホルムアルデヒド添加飼料を50日間与え、通常の飼料を与えたコントロール群と比較した。投与期間終了後、曝露群の糞便中の大腸菌数の減少を確認し、腸管関連リンパ組織について組織学的解析および免疫学的解析を実施した。一方で、ホルムアルデヒド曝露による影響がホルムアルデヒドの直接の毒性によるものか、或いは腸内細菌の減少を介したものであるかを確認する目的で、30mg/kg/dayの摂取量になるように調整したカナマイシン溶液を飲料水として与えたポジティブコントロール群を設定し、曝露期間後に粘膜免疫の中心となるIgA抗体について、新鮮糞便、血清中のIgA量をELISA法にて測定した。また、脾細胞、パイエル板および小腸上皮間リンパ球のサブセットを解析した。糞便の培養では、ホルムアルデヒド曝露群、ポジティブコントロール群ともコントロール群に比較して有意に大腸菌数の減少が認められた(p<0.05、およびp<0,01)。電子顕微鏡像において曝露群ではコントロール群に比較して腸絨毛の表面が滑らかな構造を呈した。さらにパイエル板の微細構造を観察すると曝露群ではリンパ球の密度が低くなり、アポトーシスを呈する細胞が数多く観察された。新鮮糞便中のIgAに差を認めなかったものの血清IgAは、ホルムアルデヒド曝露群、ポジティブコントロール群とも有意に減少した(p<0.01)。脾細胞リンパ球のsubpopulation解析では、曝露群とポジティブコントロール群で同様の動きを示した。以上のことから、消化管免疫系の変容は、腸内細菌の減少を介して生じた影響であることが示唆された。本研究から、ホルムアルデヒド含有食品は、腸内細菌を減少させ、腸内環境の変化と同時に腸管関連リンパ組織の変容に影響することが示唆された。
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