研究課題
TGFβ1結合蛋白質LTBP-1には亜型のLTBP-1L(long) とLTBP-1S(short)があり,本研究では癌で高発現しているLTBP-1Lの役割や分子マーカーとしての有用性を明らかにすることを目的とした。今年度はまず、昨年度までに作製した癌培養細胞株のLTBP-1L、LTBP-1S それぞれの安定発現株を用いて細胞増殖能、細胞遊走、浸潤能などの機能解析を行い、発現量の増加に伴う機能変化を測定した。使用した培養細胞株は胃癌MKN1, MKN45, NUGC3、卵巣癌JHOM1, TMK1、子宮癌HeLaであり、それぞれ発現株を3クローンずつ解析に用いた。その結果、発現株によって細胞増殖能、細胞遊走、浸潤能にわずかな違いが見られたものの、全ての細胞株において、顕著な変化は認められなかった。従って、TBP-1L、LTBP-1S がこれらの機能へ影響していない可能性と、両者ともに、細胞内での局在に加えて、細胞外マトリックスの構成成分であることから、培養系では顕著な変化が現れなかった可能性が考えられた。そこで、胃癌臨床組織検体を使用してリアルタイムPCRによる正常部と癌部での発現解析を行った。その結果、正常部ではTBP-1L、LTBP-1SともにmRNA発現レベルが低く、癌部では高発現している検体と発現が低い検体が混在していたが、組織型や病期との関連は見られなかった。一方、LTBP-1抗体を用いて胃癌臨床組織で同蛋白の発現を解析したところ、癌部において組織型、肉眼型、間質のタイプと蛋白発現量との有意な関連が見られた。これらより、LTBP-1Lは癌化の予測分子マーカーにはなりえないが、癌の悪性化に関与している可能性が依然高く、治療の標的分子候補であると示唆された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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PLoS One
巻: 8 ページ: e55289
Food and Nutrition Sciences
巻: 3 ページ: 1037-1042
DOI:10.4236/fns.2012.38137