研究概要 |
石綿曝露によるNKp46遺伝子発現抑制メカニズムの解明を目的とし、末梢血単核球(PBMC)を石綿クリソタイルB(CB)5μg/ml濃度曝露下、IL-2添加培地で培養し、NK細胞の活性化および抑制に関わるサイトカイン濃度の測定をフローサイトメーター(FCM)およびluminexを用いて行った。CB曝露下でもIL-6濃度は変わらず、IL-15, IL-18濃度は逆に増加を示した。他方、IL-12p40はCB曝露による濃度低下を示し、生理活性を持つIL-12p70も培養2日目の濃度が低下していた。一方、TNF-α,IFN-γ,IL-17Aは培養5日目に著明な増加を示したが、これらはCB曝露により有意に抑制された。IL-10はCB曝露による濃度低下を示した。培養後回収した細胞を、単球系細胞・CD4+CD8-リンパ球・CD4-CD8+リンパ球・CD4-CD8-CD56+NK細胞にFCMでソートし、各細胞集団のサイトカインmRNAレベルをリアルタイムPCRで調べた。IL-12p40, TNF-αmRNAレベルは単球糸細胞で高く、CB曝露下で低下した。IFN-γ,IL-17AについてはCD4^+リンパ球が、CB曝露下での有意な低下を示した。また、CB曝露下の単球系細胞数は著しく減少していた。以上の結果から、CB曝露下での単球系細胞の減少およびIL-12p70,TNF-α,IFN-γ,IL-17A濃度の低下が明らかとなった。これらのサイトカインはNK細胞活性化に関わることから、石綿曝露によるNK細胞上NKp46発現低下の一因である可能性があり、本年度の研究によりNKp46発現抑制メカニズムの解明の糸口を得たといえる。今後、中和抗体を用いた実験を行うなどし、これらのサイトカイン産生低下とNKp46発現低下との関わりを調べる必要がある。
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