研究概要 |
本研究では,「喫煙行動によって吸煙された煙中VOCが酸化ストレスの原因である活性酸素種をVOC濃度に依存して発生させ,生体内酸化ストレス成分の上昇に寄与する」という作業仮説を検証することを目的とした。まず,VOCのサンプリング試料には,痛みを伴わずに捕集可能な呼気を使用した。次に非喫煙者・喫煙者の呼気中VOC暴露量測定のために加熱脱着管を用いたサンプリング法及び分析方法を確立中である。最終的に非喫煙者・喫煙者の呼気及び尿試料を用いて,曝露されたVOCと尿中酸化ストレスマーカー類(8-OHdG,8-iso-prostaglandin F2 α)との関連性を評価する。同時に,尿中ニコチン代謝物などのたばこ関連バイオマーカーと1日の総吸煙量を測定することで,詳細な曝露量と酸化ストレスとの関連性を解析する計画である。 当該年度では,尿中の酸化ストレスマーカであるF2-isoprostane類(8-iso-prostaglandin F2 α,5-iso-prostaglandin F2 α-VI)の測定法の更なる確立を行った。その手法は,球状C18を充填した自製カラムに尿試料を導入後,0.1%酢酸,1%アンモニア/40%メタノール溶液及び0-1%酢酸の順で洗浄後50%メタノールで溶出したb溶出試料は次にENVI-Carbに供し,0.1%酢酸及びメタノールの順で洗浄後0.1%酢酸/エタノール溶液で溶出しLc/Ms/Msへ供した。尿試料を用いての日間及び日内変動は,iPF2α-IIIがそれぞれ1.0-20.2%,2.9-14.7%,5-iPF2α-VIがそれぞれ0.8-11.9%,3.2-3.6%となった。また,添加回収試験での回収率はiPF2α-IIIが78.2-90.7%,5-iPF2α-VIが75.5-95.3%であった。さらに,尿中ニコチン代謝物(ニコチン,コチニン,3-ハイドロキシコチニン)の測定法も確立した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,これまでに確立した測定法と同時に呼気中のVOC暴露量測定も合わせて実施し,呼気中VOCと酸化ストレスとの関連性を調査する計画である。呼気中の揮発性有機化合物の定量については,加熱脱着管に捕集する計画であったが,定量性に欠ける場合は,溶媒抽出法などその他の手法で測定をすることも視野に入れる。
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