研究概要 |
本研究では,「喫煙行動によって曝露された煙中ガス成分(特に,揮発性有機化合物:VOC)が酸化ストレスの原因である活性酸素種をガス濃度に依存して発生させ,生体内酸化ストレス成分の上昇に寄与する」という作業仮説を検証することを目的とした。 最終年度では,昨年度までに測定法を確立した尿中の酸化ストレスマーカであるF2-isoprostane類(8-iso-prostaglandin:F2α,5-iso-prostaglandin:5-iPF2a-VI),尿中ニコチン代謝物(ニコチン,コチニン,3-ハイドロキシコチニン),呼気中ガス成分の一酸化炭素量と1日の総吸煙量を測定することで,日本人喫煙者の喫煙行動との関連性を評価した。同時に尿中8-OHdG値及び8-isoprostane値の分析も行った。喫煙者と非喫煙者の各酸化ストレスマーカー値でt検定を行ったところ,尿中8-OHdGと8-isoprostane値は,喫煙者が高かった(p<0.05, p<0.001)。次に,日本人喫煙者の各種バイオマーカーの値について単相関分析を行った。8-OHdGは,1日の喫煙本数,1日の総吸煙量,尿中コチニンに有意であった(p<0.05)。8-isoprostaneは,年齢,唾液中コチニン,尿中3-ハイドロキシコチンンに有意であった(p<0.05)。一方で,呼気中一酸化炭素との関連性は,認められなかった。また,呼気中VOCのサンプリング法及び分析方法の確立を行ったが,喫煙後のサンプリングまでの間隔など更なる条件検討が必要であった。今後は,呼気中VOC分析法を確立し,酸化ストレスとの関連性について評価を進める計画である。
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