ヘリコバクター・ピロリ菌(HP)感染により胃粘膜にDNAメチル化異常が誘発され、その蓄積の程度は胃発がんリスクと相関することが示唆されている。しかしながら、HP以外の胃がんに関連する要因と胃粘膜メチル化レベルとの関連については疫学的な検討がほとんどなされていない。本研究の目的は検診受診者を対象に、血中ポリフェノール類濃度と胃粘膜DNAメチル化レベルとの関連を横断的に検討することである。平成21年4月から8月末に国立がんセンターがん予防検診・研究センターを受診した40から69歳の検診受診者のうち、研究参加への同意が得られた者300名について、血液試料・胃粘膜生検による病理学的評価およびメチル化レベル解析用の試料の提供、生活習慣に関する質問票への回答を得た。HP現感染が陽性と判定された120名については、さらに標準的除菌療法を施行し、除菌後6ヶ月以降にメチル化レベルの解析のため胃粘膜の生検、血液試料の収集もおこなった。DNAメチル化レベルの解析については、胃がんリスクとの相関が横断的にしめされている遺伝子のCpGアイランドについて、定量的メチル化特異的PCR法により、DNAメチル化レベルを算出、蓄積したDNAメチル化異常の量の指標とする。平成22年度は、HP-IgG抗体についてはすでに測定していたが、HP既感染で抗体が陰性化している症例について調べるためCagA抗体の測定を行った。平成23年度は、血清ポリフェノール類濃度の測定を行い、DNAメチル化レベルとの関連性を検討する予定である。
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