研究概要 |
医療診断装置として広く普及しているMRI(magnetic resonance imaging)は撮像に強力な静磁場を利用しており,MR検査作業従事者(医師,看護士,放射線技師など)は、患者の介助や撮像準備を行う際に,最大で数テスラ(T:地磁気の約10万倍の強さ)の漏洩磁場にばく露される.本研究では,携帯型磁気センサとモーションキャプチャを用いて,MR検査作業者のはく露磁場の実態調査と,強磁場環境下での作業動作に由来する神経刺激リスク評価を目的とするものである. 本年は(1)カメラシステムの準備,(2)撮像を伴わない予備磁場計測,(3)MR検査室における作業環境の調査を行った.(1)強磁場環境で撮像可能なカメラシステム(MRC System GmBH)と汎用カメラを用いて被験者の動きを撮像し,動画解析ソフトによって追尾するシステムを作り,現在改良中である.(2)予備計測では,3軸ホール素子型の携帯型磁界計測器(THM1176,Metrolab)を被験者の胸部につけ,MR検査室内で計測器をつけて漏洩磁場へのばく露を記録した.一般的なMR検査準備作業(検査台の準備,コイル設置,パネル操作,清掃など)を依頼したところ,被験者の最大ばく露磁場は,0.12-0.22 T(3 T scanner,3 trials)および1.3-1.6 T(7 T scamer,5 trials)であった.国際的な静磁場ばく露指針(例:ICNIRPガイドライン)と比較した場合,ばく露磁場は十分低いが,実際には体動に伴う時間変動磁場(|dB/dt|)が発生しており,今回の測定条件における最大|dB/dt|は,0.16-0.31 T/sec(3 T scanner)および1.20-2.75 T/sec(7 T scanner)であった.(3)MR検査室における作業環境の調査は,検査室内での作業内容や磁性体持ち込みによる事故事例などについて調査票による調査を行った.
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