同居家族の喫煙を受動喫煙の指標とし、同居家族の喫煙が脳卒中発症に関連するかを検討した。受動喫煙以外のリスクである血圧値として再現性、予後予測能が診察室血圧よりも優れる家庭血圧を用いた。 対象者は、大迫研究に参加した、同居家族のいる30歳以上の家庭血圧が正常(家庭血圧<125/80mmHgかつ降圧薬非服用者)であり、脳卒中既往のない非喫煙女性764人(平均50.9歳)である。対象者を同居家族の喫煙状況により、「現在家族の喫煙あり」、「過去に家族の喫煙あり」、「家族の喫煙なし」の3群に分類し、Cox比例ハザードモデルにより家族の喫煙のない群を参照として、脳卒中発症リスクを比較した。Coxモデルは追跡開始時の年齢、家庭収縮期血圧、body mass index (BMI)、現在喫煙者・過去喫煙者を含めた同居する喫煙者数、糖尿病・脂質代謝異常症・心血管疾患の有無にて補正した。 平均12.9年の追跡期間中に、22名の脳卒中発症が認められた(脳梗塞16、出血性脳卒中6)。「家族の喫煙なし」群を参照とした際の「現在家族の喫煙あり」群の脳卒中発症に対するハザード比は5.89(95%信頼区間1.01 - 34.5)であり、有意に高値であった。また、「過去に家族の喫煙あり」群のハザード比は、有意ではないものの、2.41(95%信頼区間0.20 - 29.2)と、やや高めであった。 「現在の家族の喫煙」は脳卒中発症の有意な危険因子であった。また、「過去に家族の喫煙あり」群の脳卒中発症リスクは上昇傾向にあったが、「現在家族の喫煙あり」群と比較するとそのリスクは低かった。脳卒中発症予防にも、家庭内における受動喫煙対策が重要であると考えられる。
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