研究概要 |
本研究では、長年循環器疾患の疫学調査を継続している地域住民を対象として、うっ血性心不全のバイオマーカーに関する疫学調査を実施し、地域の一般集団における心不全の実態、及び他の健診所見の関連を明らかにし、心不全の把握方法の精度を格段に向上させることを目的とする。本年度は2010年の秋田県の某地域における住民健診受診者1,579人について、血清NT-proBNP値を測定し分析を行った。NT-proBNP値(pg/ml)の分布は、54以下の者が57%、55-124の者が27%、125-499の者が13%、500-949の者が2%、950以上の者が1%であった。NT-proBNPが500までの範囲では、年齢が高くなるほどNT-proBNP値も上昇した。500以上では年齢との関連はなかった。また、NT-proBNPが950までの範囲では、NT-proBNP値が高いほど高血圧の有病割合も段階的に上昇した。NT-proBNPが高くなるにつれ、糖尿病治療、心臓病治療、不整脈既往、心房細動既往・現病、心電図異常、心不全診断歴は概ね段階的に増加し、特に心房細動との関連が強く、NT-proBNPが125-499での心房細動有病率は3%であったが、500-949では50%、950以上では64%であった。さらに、NT-proBNPが500以上では、80%以上の人が高血圧・糖尿病・心臓病のいずれかで既に治療を受けていた。臨床症状については、夜間呼吸苦、労作時息切れとNT-proBNP値との比較的強い相関が見られたが、咳疾喘鳴、足のむくみとの相関は明らかではなかった。次年度は、同様の分析を茨城県の約1600人に対しても行い、本年度の分析結果と併せて総合的に分析を進める予定である。
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