研究課題/領域番号 |
22790566
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
岡本 希 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (70364057)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 認知機能 / 現在歯数 / 歯周病 |
研究概要 |
【目的】5年間における軽度認知機能障害および認知症領域の新規発生とベースライン時の現在歯数との関連を検討するために、ベースライン時に認知機能が正常であった地域在住高齢者3696名(当時平均72歳)を対象に、5年後の健診を実施した。 【認知機能判定】正常:Mini-Mental State Examination(MMSE)24点以上かつ遅延再生2点以上/ 軽度認知機能障害:MMSEが24点以上かつ遅延再生1点以下かつGeriatric Depression Scale(GDS)5点以下/ 認知症領域:MMSE23点以下 【結果】5年間の死亡は148名、転居36名、施設入所8名、入院または病気療養中のため追跡健診に参加しなかった者は182名であった。追跡健診参加者は2508名で、参加率は75.5%であった。健診で正常と判定された2094名、軽度認知機能障害241名、認知症領域133名を分析対象者とした。従属変数を軽度認知機能障害または認知症領域とし、独立変数を現在歯数(4分位:26本以上/21-25本/11-20本/0-10本)、年齢、性別、学歴、がん・脳血管疾患・心筋梗塞・高血圧・糖尿病・脂質異常症の既往の有無、外出頻度、10m歩行テストとしたロジスティック回帰分析(強制投入法)を行った。現在歯数26本以上を基準にした場合の軽度認知機能障害に対するオッズ比は21-25本が1.55(95%CI 1.05-2.29)、11-20本が1.57(1.04-2.38)、0-10本が1.72(1.15-2.58)で有意な関連がみられた(P for trend<0.012)。現在歯数と認知症領域との間に有意な関連はみられなかった。 【考察】健診不参加者の中に認知症領域の者が含まれている可能性が高いため、不参加者を対象とした追跡調査を実施した上で、関連性について再検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
5年目の追跡健診はほぼ終了し、認知機能検査、歯科健診、がん・心筋梗塞・糖尿病・高血圧・脂質異常症など高齢期に多い慢性疾患の罹患の把握、体力測定などのデータと血液試料を入手できた。参加者のほぼ全員から遺伝子解析研究の同意を得ることができた。DNA抽出は、2012年度末時点で500名分(約5分の1)終了している。
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今後の研究の推進方策 |
1)健診不参加であった者を対象に、郵送や訪問、電話調査を実施して、認知症の有無を確認する。 2)残りの検体のDNA抽出を完了させ、認知症の関連遺伝子(アポリポタンパクEや炎症性サイトカインのIL-1など)のSNP解析に取り掛かる。5年間の認知機能障害(軽度認知機能障害・認知症領域)の累積罹患率をアウトカムとし、慢性疾患の罹患、身体機能要因、心理的社会的要因、うつ、遺伝要因を調整因子とし、現在歯数(または歯周病の重症度)とアウトカムとの関連を検討する。 3)歯周病原菌・ヘリコバクターピロリ菌・サイトメガロウイルス・クラミジアニュ-モニエ・単純ヘルペスウイルスの血清抗体価を測定し、慢性感染の負荷(総感染価)と軽度認知機能障害および認知症領域との関連を検討する。 4)本研究課題で開発した健康関連QOL尺度である15D日本語版 (Okamoto N, et al. Plos One 2013)と2010-2013年の3年間に発生した死亡との関連から、15D日本語版の妥当性を縦断的に検討する。
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