研究課題/領域番号 |
22790567
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
佐伯 圭吾 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (60364056)
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キーワード | 疫学 / 住居医学 |
研究概要 |
研究の目的と背景 心血管疾患の死亡率が冬季に上昇することと、外気温が低い日の血圧モーニングサージが高いことから、血圧モーニングサージの上昇が冬季の心血管疾患の罹患を上昇させている可能性がある。室温を含めた直接暴露した環境温度と血圧モーニングサージとの関連を明らかにすることは、室温コントロールによる血圧モーニングサージ抑制と冬季の心血管疾患増加を防止する効果を推測する重要な手掛かりとなる。 研究の経過と内容と方法 2010年10月から2011年7月に奈良県内在住の60歳以上の男女192名を対象者として、48時間の自由行動下血圧測定、住居内温熱環境測定を冬季(11月~3月)および秋・春(9-10月、4-7月)の2回実施し、血圧モーニングサージの室温変動による影響を検討した。被験者によって記録された外出時刻、寝室滞在時刻から、外出時間は外気温、自宅滞在時刻のうち寝室外の時刻は居間の室温、寝室滞在時間は寝室の室温をそれぞれ当てはめ、血圧測定時刻の暴露温度を推定した。 おもな結果 冬の暴露温度は、日中で7.5℃、夜間で9.7℃、朝で6.9℃低かった。血圧モーニングサージを従属変数、年齢、BMI、喫煙率、血圧測定時の身体活動量を説明変数とするマルチレベル多変量解析の結果、血圧モーニングサージと環境温度には有意な負の相関を認め(p<0.01)、トラフモーニングサージ(夜間最低血圧から起床後2時間平均血圧への上昇)は朝の環境温度が10℃低下で収縮期血圧0.4mmHgが上昇し、起床前モーニングサージ(起床前2時間から起床後2時間への血圧上昇)は、環境温度が1℃低下で0.5mmHg上昇すると推定された。住居内寒冷曝露が血圧に及ぼす影響が十分な対象者数の調査で科学的に立証されたことになる。上記の結果は欧州高血圧学会(2012年4月25~29日ロンドン)の発表演題に受理されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は大規模コホート藤原京スタディーの対象者から高血圧症を有する高齢者400名を抽出し、夏および冬の2季節でのべ800名の調査を実施し、季節変動を検討する予定であった。しかし、対象者募集を効率化するために同コホート以外の対象者を含めた募集を行い、さらに高血圧患者以外での影響を調査するために、60歳以上の高齢者192名に対し、48時間調査を2季節(冬vs秋or春)完了した(2011年7月のべ384人のデータ)。これを解析を行ったところ、対象者数で季節再現性の検討は十分であった。そこで、2011年10月から2012年4月には、合計350名の対象者を冬季1回のみ調査を立案・完了し、のべ734名の調査を終え、ほぼ当初の計画通りの調査を遂行できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1)192名の冬+秋or春の季節変動データ(のべ384名)2)540名の冬のデータ 現在上記のデータが得られており、1)については解析が完了し学会発表を2012年4月末に欧州高血圧学会で発表を行い論文発表する。2)については今年度、入浴環境の睡眠や夜間血圧との関連について解析し、学会・論文にて発表する。一方の申請では、室温および血圧変動と藤原京スタディー対象者で明らかになっている健康関連QOL,転倒,骨折との関連を検討する予定であったが、今回の調査には同スタディー以外の対象者も多く含まれることになったために困難となった。一方、当初予定していた調査項目に加えて、アクチウォッチを用いた身体活動量や睡眠の質を計測できたことから、室温・入浴が、身体活動量や入眠潜時や睡眠効率に及ぼす影響を検討することが可能になったため、解析をすすめる計画である。
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