背景 血圧モーニングサージは 24 時間血圧とは独立した心血管疾患の危険因子である。外気温が低い日に測定された血圧モーニングサージが高い結果が報告されているが、室温や曝露温度(外出時は外気温、在室時は室温が該当)の影響は明らかになっていない。室温や曝露温度の影響を明らかにすることは冬季の死亡率上昇の抑制策を立案する重要な資料となる。方法・結果 192 名の対象者(平均年齢 69.9)の自由行動下血圧、室温(居間、寝室)、アクチグラフを用いた身体活動量の同時測定を 48 時間×2 季節(冬および春 or 秋)行い、768 人・時間のデータを得た。外気温と居間の室温の相関を検討したところ、朝の外気温が中央値より高い日に比べて(r=0.84 in 9.82 to 27.7℃)、外気温の低い日には両者の相関が低下していた(r=0.28 in -3.37℃ to 9.73℃)。赤池の情報規準を用いて、単変量および多変量回帰モデルを比較すると、曝露温度を用いたモデル最も優れた結果を示し、次いで室温のみ、 外気温のみ、を用いたモデルの順であった。このことから、外気温情報のみを用いた先行研究に比べて、室温情報を付加した分析は、血圧変動をより正確に予測していることが分かった。多変量線形混合モデルによる分析から、1℃の曝露温度の低下は sleep-trough morning BP surge(起床後2時間平均血圧と夜間最低値を含む1時間平均血圧の差)の 0.44mmHg 上昇と prewaking surge(起床後 2 時間平均血圧と起床前2時間平均血圧の差)の 0.52mmHg 有意な関連を認め、これは身体活動量を含む交絡要因とは独立した関連であった。結論 低い曝露温度は、血圧モーニングサージの上昇と有意な独立した関連を認め、室温コントロールによる血圧モーニングサージの調整や、死亡率低下の可能性が示された。
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