研究概要 |
有機フッ素化合物(PFCs)は、難分解性、高残留性の特徴をもつ物質である。ヒトにおいて妊娠中の曝露によりPFCsが血液胎盤関門を通過し、胎児へ移行することが報告された。そこで、平成22年度は、血液中のPFCs前処理方法及び超高速液体クロマトグラフ/タンデム質量分析装置によるPFCs濃度測定の確立を目指した。しかし、PFOS,PFOAの溶媒由来ブランクピークが検出され、ヒト血漿中に低濃度に存在するPFCsが正確に測定できないため、検出送液ポンプと試料注入口の間にC18カラムを取り付けることにより、PFCsのブランクピークを低減することができた。また、グラジエント条件を変更することで、PFOSの直鎖と分岐鎖を分離することができ、規制の対象である直鎖の血中PFOS濃度を正確に分析することが可能となった。また、国際的に使用されている標準血清を用いて他機関7社と濃度比較を行ったところ、PFOS,PFOA,PFNA,PFDA,PFUdA,PFHxSについてほぼ同値を示し、迅速かつ高精度の定量法を構築した。また、妊婦の血液中のPFCs濃度を一斉分析により測定した結果、PFOA,PFOS,PFUdAは全ての試料から、PFNA,PFDAは75%の試料から検出された。その他のPFCsについては全ての試料で定量限界以下であった。本研究の北海道における妊婦のPFOS,PFOA濃度は、諸外国および我が国の妊娠可能年齢の女性の血中濃度に比べて低値を示した。また、北海道内の18,567名の児のうち、日本産婦人科医会先天異常モニタリング(JAOG)よりもダウン症、尿道下裂の有病率が高く、18トリソミー、消化管閉鎖、水頭症、先天性心疾患などは低い傾向であることがわかったまた、全出産における先天異常有病率は1.91%、在胎22週以降では1.68%で、JAOG報告(2005-2006年度)1.95%~1.8%よりも若干低値を示した。今後は、PFCsによる先天異常を含む子どもへの影響について明らかにする予定である。
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