研究概要 |
1990(平成2)年にスタートした多目的コホート研究(JPHC Study)のコホート対象地域(コホートI:岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県石川保健所管内、コホートII:茨城県水戸、新潟県柏崎、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古保健所管内)に居住する住民約11万人のうち、平成7年(コホートI)と平成12年(コホートII)に白内障を発症していなかった76,190人(男性35,365人、女性40,825人)を対象に白内障罹患調査を行った。その結果、5年後の平成12年(コホートI)と平成15年(コホートII)の調査で、男性1,004人(2.84%)、女性1,807人(4.43%)が新たに白内障に罹患した。調査開始時の肥満度(BMI)とその後5年間の老人性白内障の発症との関係を解析した結果、BMIが最も低いやせている群との最も高い太っている群では、男女ともに、発症リスクが高くなるU字型の傾向が認められた。欧米では肥満により老人性白内障の発症率が上昇することが確認されている一方、栄養状態が不良な地域においては低栄養ややせにより老人性白内障の発症率が上昇するとの報告もある。今回、日本人大規模集団を長年追跡した結果、肥満ややせを回避することが、老人性白内障の発症率を低下させる可能性があることが、日本人においても初めて確認された。 また、本年度は新たに茨城県水戸地域の住民1,113名から得られた眼圧値とさまざまな生活習慣や栄養摂取等に関する情報に基づき、眼圧値の上昇または下降に関連する因子を解明するための分析を行った。解析の結果、血圧およびBMIの上昇が眼圧の上昇と有意な関連があることが明らかになったので、第71回日本公衆衛生学会および第20回日本慢性期医療学会で、これらの研究結果の概要を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)白内障研究:全地域 1990(平成2)年にスタートした多目的コホート研究(JPHC Study)のコホート対象地域住民76,190人(男性35,365人、女性40,825人)を対象に白内障罹患に関する5年間の追跡調査を行った結果、男性1,004人(2.84%)、女性1,807人(4.43%)が新たに白内障に罹患した。この結果を基に、白内障の罹患リスクに関連する因子を日本人においても初めて明らかにすることができた。 2)眼圧研究:茨城県水戸地域 昨年度からは、緑内障の最も重要な危険因子の1つである眼圧に関連する因子を解明するため研究を開始した。茨城県水戸地域の住民1,113名から得られた眼圧値とさまざまな生活習慣や栄養摂取等に関する情報に基づき、眼圧値の上昇または下降に関連する因子を解明するための研究を新たに開始することができた。 3)緑内障および加齢黄斑変性研究:佐久地域 簡易視野測定検査の結果は、受診者全員(2,573名)に文書にて既に通知を完了している。また、視野に異常所見が認められた受診者については地元眼科医療機関への紹介状を添付したが、この際、簡易視野測定検査によりスクリーニングされた受診者の眼科受診率を高めるために、受診者への事前の十分な説明と有所見者への受診勧告を地元の地方自治体(佐久保健所および市町村役場)とも協力して実施している。簡易視野測定検査の結果、受診者全体の10.8%にあたる278名に視野異常が認められ、このうち、現在までに210名(75.5%)から精密検査を実施した眼科での精密検査の結果の返信が得られている。
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