1)白内障研究の成果 申請者は、コホート対象地域(岩手県二戸、秋田県横手、新潟県柏崎、長野県佐久、茨城県水戸、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県石川、沖縄県宮古保健所管内)に居住する住民を対象に白内障罹患に関する追跡調査を実施した。ビタミンC摂取量を5分位に分類し、白内障の発症との関係を解析した結果、ビタミンCの摂取量が多くなるに従い、白内障罹患率が低くなる傾向が認められた。これまで欧米で報告されていたビタミンC摂取による白内障罹患リスクの予防効果を、日本人でも初めて確認されたことを報告した。また、調査開始時の肥満度(BMI)を算出し、それを5群に分類し、白内障罹患との関係を解析した結果、BMIが最も低いやせている群と最も高い太っている群では、男女ともに、罹患リスクが高くなるU字型の傾向が認められた。本研究の結果から、肥満ややせを回避することが、白内障罹患率を低下させる可能性があることが、日本人において初めて明らかにすることができた。 2)緑内障研究の成果 茨城県水戸地域に居住する住民を対象に、緑内障の最も重要な危険因子の1つである眼圧の上昇または下降に関連する因子を解明するための大規模疫学研究を実施した。眼圧値とさまざまな身体因子や生活習慣等に関する情報との関連を解析した結果、収縮期血圧、拡張期血圧およびBMIは眼圧と正の関連があること、喫煙習慣と眼圧は正の関連があること、また、喫煙習慣は眼圧と正の関連があり、特に喫煙者では眼圧高値を伴った血圧高値者が有意に多いことが、日本人においても改めて確認された。さらに、これらの対象者を約3.5年間追跡し、収縮期血圧、拡張期血圧およびBMIの変動量と眼圧の変動量との関連を縦断的に解析した結果、追跡期間中における収縮期血圧、拡張期血圧およびBMIの変動量は眼圧の変動量と正の関連があることが明らかになった。
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