本研究では、まず学内に実験環境としての病棟情報システムを構築し、これを用いて病棟情報システムから抽出し得る質指標の仮説構築を行った。病棟情報システムは、オーダエントリシステムから受け取るオーダ情報、看護・介護計画などを含む日常生活援助に関する情報、心電図モニターやナースコールなど医療機器に関する情報の三種類が格納されており、これらを組み合わせて質評価データセットを作成した。 次に、関東地方における2施設の匿名化データを用い、この質評価データセットに基づくデータ解析を行った。その結果を国内外の研究協力者とともに比較検討したところ、診療面での質指標、日常生活ケア面での質指標は、概ねデータマイニングの範疇で抽出が可能であった。他方、看護・介護に関する間接的業務(患者との連絡調整など)についてはデータマイニングのみでは十分ではなく、テキストマイニングの中から抽出する必要性があることが明らかになった。 今年度研究の一環として行った海外研究者との意見交換では、病棟ケアの質指標の使途はケアプロセスの改善が主軸ではあるが、実務的には人員配置など経営改善での活用頻度が高いことも明らかになった。本研究では、わが国では介護・看護業務の半数を占める間接的業務を可視化する手段としてテキストマイニングを活用できることを明らかし、次年度研究でこれらの間接的業務を指標化するための道筋をつけることができたと考えそいる。
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