研究期間の最終年度となる平成23年度は、前年度に行った病棟業務支援システム(看護・介護支援システム)でのデータ抽出可能性を検討するための予備実験をもとに、複数の病院でテキストマイニングおよびデータマイニングを伴う質評価指標の抽出を行った。 質評価のうち、プロセスやアウトカムの観点で重要性の高い安全性に着目すると、例えば三大インシデントの「薬剤」「転倒・転落」「チューブ・ドレーン抜去」に関連した行為については、いずれも同システムの実施履歴を用いて、定量的な分析を行う余地が大きいことが明らかになった。直接的な行為が伴わない転倒・転落に関しても、ベッド柵の装着と、入院後の経過日数などを分析することが可能であり、これらの情報はテキストマイニングよりも、データマイニングを行った方が有意義であると考えられた。 他方、テキストマイニングを行う対象としては、看護・介護職員が行う「飲水の声かけ」「インフォームドコンセントの日程調整」「おむつの購入依頼」など、調整機能や生活支援機能に関する行為が適していると考えられた。ただし、これらの項目は具体的に看護・介護の質にどのように寄与しているか整理しにくい面もあり、多施設比較の方法を検討する必要性が示唆された。 本研究を通じ、看護・介護職員が日常業務に用いているデータから、病棟ケアの質評価は十分に可能であることが明らかになった。なお、本研究成果の概要については、スカンジナビア医療情報学会等で報告した。
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