研究概要 |
国立がん研究センターがん予防・検診研究センターで2004~2010年の期間に大腸内視鏡を施行した初回受診者約1万名の臨床情報データベースの構築を平成23年度に完了した。この臨床情報データベースを元に受診者の主たる所見を調査したところ、1,100名強の受診者が5mm以上の大腸腺腫を有していることが明らかになった。5mm以上の大腸腺腫を肉眼的形態で分類したところ、隆起型病変と非隆起型病変の割合はほぼ1:1であった。非隆起型病変の大部分は平坦型大腸腺腫で、陥凹型大腸腺腫を有する受診者は10名強(3%弱)と非常に希であった。更に平成23年度の研究として、2004~2005年の受診者1,520名を対象とした分子疫学研究を実施した。大腸腺腫の発生にはビタミンDが予防的であるとの知見があるため、血中ビタミンD濃度と大腸腺腫との関連を検討した。また、ビタミンDが細胞に作用する足場となるビタミンDレセプターの遺伝子多型についても、大腸腺腫との関連を検討した。先行研究と同様に、血中ビタミンD濃度と大腸腺腫との間に負の関連が見られた。一方、ビタミンDレセプターの遺伝子多型と大腸腺腫との間には明らかな関連は見られなかった。本研究から得られたより重要な知見は、血中ビタミンD濃度とビタミンDレセプターの遺伝子多型との間に交互作用が見られたことである。この知見から、大腸がん予防を目的にビタミンDの強化(fortification)を行う場合、より効果が期待できる集団とやや効果が落ちる集団が存在することが明らかになった。
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