研究概要 |
本研究では,高齢者における認知機能障害(軽度認知障害(MCI)および認知症)のスクリーニングと健常高齢者の認知機能評価の両面を満たし,かつ20分程度で実施可能な集団版の認知機能評価検査の開発を目的としている。本年度は集団版認知機能評価検査の開発に向け、(1)候補となる検査課題の選出のための文献レビュー、(2)適切な検査課題の選定に向けた調査を実施した。(1)では認知機能障害のスクリーニング検査に関する文献と、高齢期の認知機能評価に関する文献とを分けてレビューを実施した。その結果、MCIスクリーニング検査に関してはMontreal Cognitive Assessment(MoCA)及び7-minute screening test(7MS)で用いられている検査課題が有用であることが示された。認知機能評価に関する文献として、認知機能をアウトカムとした介入研究に着目し、そこで用いられている検査課題についてレビューを行った結果、最も多く用いられていた検査課題は語想起課題(Word Fluency test、WF)であり、69件の文献のうち28件で使用されていた。他にはTrail Making Test(TMT)が多く用いられていた。言語機能、注意機能の評価指標についてはある程度使用される課題に共通性がみられたが、記憶課題については評価指標が研究によりばらつきがあり、代表的な検査課題の選定が困難であった。(2)では、特に有用な検査課題について検討を行った。記憶課題について、健常高齢者群44名、MCI群17名、軽度AD群17名を対象に3種の課題を実施し比較した結果、MoCAで用いられている聴覚呈示による5単語記憶課題がスクリーニング検査として最も有効であることが示され、健常高齢者MCIを鑑別する際の感度は91%であり、特異度は71%であった。他に7MSの検査課題、WF、TMTについても検査課題としての有用性について検討を行い、集団版認知機能評価検査の作成に向けた課題を選定した。
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