アルボウイルス感染症により、毎年海外で多数の感染者や死者が報告されており、わが国に入ってくる感染症も多様化している。これら感染症に対する検査法の確立は急務であり、本研究課題ではアルボウイルスの鑑別を、従来法よりも、より簡便で短時間に行う方法の開発を目的とする。本研究の対象として蚊媒介性疾患のフラビウイルスとアルファウイルス感染症をモデルとし、RT-LAMP(real-time reverse transcription-loop-mediated isothermal amplification assay)法を用いた網羅的検索法を構築する。本法により、アウトブレイク時に検体が急増しても迅速に対応することが可能となり、ベクターサーベイランスなど多検体のスクリーニングも簡便に実施できる。さらに、網羅的検索により未知のウイルスを検出することも可能となる。 平成22年度は、迅速診断法確立の方針として、近縁ウイルスの共通プライマーの作成を試みた。すなわち、デングウイルス1~4型、日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、ジカウイルスのシークエンスデータからフラビウイルスの共通プライマーを設計し、チクングニヤウイルス、西部馬脳炎ウイルス、東部馬脳炎ウイルス、ベネズエラ馬脳炎ウイルスのシークエンスデータからアルファウイルスの共通プライマーを設計した。また、既報の論文を元に各ウイルスに対する特異的プライマーを設計した。以上のプライマーに対してデングウイルス、日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、ジカウイルス、チクングニヤウイルスの5種類について反応性を検討した。今後プライマーをさらに改変して検出感度を上昇させ、目的とする迅速診断法が確立されることが期待される。
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